誰でも一度は挑戦したことがある早口言葉。
普通の人は「生麦生米生卵」が言えても「東京特許許可局」は言える人は少ないと思います。しかし実は両方とも初級レベルで難しさにはあまり差はない扱いなんです。
私も一時期練習して東京特許許可局がギリギリ言えるようになりましたが、レベル2と言われる「お綾や親にお謝り お綾やお湯屋に行くと八百屋にお言い」は手も足も出ませんでした。それだけ普通の人には難しい早口言葉。なら滑舌のプロであるアナウンサーと声優は早口言葉をどれだけいえるのだろうと気になって軽く動画を集めてみました。
※年齢や経歴は2020年12月時点のものとなっています。
声優とアナウンサー、年齢が似てる人たちで比較
■森香澄(早口言葉は2:00から)
■茜屋日海夏(早口言葉は0:50あたりから)
youtubeで早口言葉を調べていくと大御所や新人の動画などいくつか見つかりましたが、まずはちょっと比較する意味も込めてある程度条件が近しい二人の方を紹介してみます。
アナウンサーである森香澄さんが25歳、声優の茜屋日海夏さんが26歳と二人とも年齢が近く、両動画とも数多くの早口言葉を言う内容だったのでわかりやすいと思います。難易度が高くなると両者とも噛む回数や読みきれないことが増えていきますが茜屋さんのほうがやや早く、そして流暢な感じがします。早口言葉の基本である「生麦生米生卵」(森…2:10、茜屋…1:04)で比較してもスピード的に茜屋さんのほうが早く言えていて、他にも「美術室 技術室 美術準備室 技術準備室」(森…10:50、茜屋…4:10)など同じような早口言葉を言っているところもあるので気になった方は比較して判断してみてください。
しかし森さんは2019にテレビ東京に入社、対して茜屋さんは声優デビューは2013年と芸歴的にはかなり開きがあります。
そこで2012年に愛媛朝日テレビに入社して大体同じ芸歴の松本圭世アナウンサー(31歳 アナウンサー歴8年)さんの動画をみてみましょう。(早口言葉は動画の2:00から)
かなり流暢で高速の早口言葉な上、ニュース原稿のような長い文章の中にいくつも散りばめられている早口言葉を次々と読み上げています。事前に暗記して言うよりも噛みやすそうな状況でスラスラと読み切る神業。これは松本アナに軍配があがるといっていいでしょう。
声優でも竹内順子さん(48歳、芸歴25年)が自身が演じたHUNTER×HUNTERのゴン=フリークスになりきってラジオで同じように文章の中にあるたくさんの早口言葉を流暢に披露していたようです。
アナウンサー、声優関係なく芸歴が長い人ほど滑舌がよく早口言葉も得意なのか……というと、調べてみたらそうでもないようです。
各局の早口挑戦動画で一番早かったアナウンサーは?
今年はコロナ禍でSNS上で有名人が様々なリレーやチャレンジをしていました。そんな中で日本テレビの公式youtubeチャンネルが「うちで挑戦!早口言葉」というアナウンサーやタレントによる早口言葉動画を投稿しました。するとそれに続くように他のTV局も続々同じお題の早口言葉動画をUPしていったんです。水卜アナなど人気アナやフジテレビでおなじみの佐野アナなど新人から人気、大御所アナと続々挑戦していっています。
この動画ではTVでおなじみの人気アナが早口言葉を披露しています。この動画では辻岡義堂アナ(34歳 アナウンサー歴11年)が上手く、水卜麻美アナ(33歳 10年)も自身の限界ギリギリまで攻めるような高速早口をしています。
このシリーズの中ではこの動画の青木源太アナ(37歳 14年)がダントツで早く「きつい時期 傷付きつつも 危機突き破る絆あり」という24文字を2回、計48文字を読み上げるのにかかった時間がわずか4秒11。1秒間に11.67文字という超高速早口を達成しています。一秒に10文字以上を聞き取りやすく言い切る滑舌の良さに驚きです。
フジテレビのバイキングでおなじみ榎並大二郎アナ(35歳 アナウンサー歴12年)がこの青木アナの高速早口を見て火がついて先輩の佐野瑞樹アナ(49歳 26年)と一緒に挑戦しました。
結果は二人とも噛み噛みで惨敗…榎並アナは青木アナと芸歴がほぼ同じで佐野アナは大先輩、さらに早口で実況する競馬中継も経験していたのでこの結果には驚きです。(榎並アナはその後、練習を重ねて「手洗いじゃぞ~」の方で青木アナの最速タイムを上回わりました。インスタ動画)
声優の「生麦生米生卵」比較
声優のほうでは「生麦生米生卵」に挑戦する動画が一番多かったのでその動画を集めてみました。名前を押すと生麦生米生卵に挑戦するところから動画が始まります。
※括弧内の芸歴は動画公開時の物になっています。
この中では芸歴が一番浅く、ほぼデビューしたての新人ともいえる八木ましろさんが一番早く正確に言えてます。次いで茜屋日海夏さん、古谷静佳さんという順番だと思います。仲村宗悟さんはかなり苦手という印象で一般の人とあまり変わらないようで親近感がわきそうです。
芸歴が長い小野坂昌也さんは役になりきって言うというシチュエーション遊びもあり、動画でも全体的に成功よりおふざけ優先という感じがしました。
ドラゴンボールのベジータ役などでも有名な大御所の堀川りょうさんはまさかの失敗。大先輩の二人が失敗しているのでやはり芸歴は関係ないように思われます。しかし堀川さんは動画内でこれより難しい「東京特許許可局」や「坊主が屏風に~」は成功しているので人によって得手不得手はありそうです。
レッスンで練習する早口言葉は得意?
この動画で人気声優の関智一さんと大河元気さんが早口言葉に挑戦している中で大河さんが「瓜売りが瓜売りに来て瓜売れず売り売り帰る瓜売りの声」という長く難しい早口言葉をあっさり成功させます。すると関さんが「こういうのは僕ら(養成所で)やっちゃってるんですよ」と言い、大河さんも「練習してるんですよ」と、出来て当然といった風に発言しています。
最初に比較した森アナや茜屋さんの動画でも明らかに難しそうなのにあっさり成功させているのもいくつかあるのでアナウンサーや声優の養成所で教える滑舌練習用の早口言葉というのがあるんでしょう。
早口言葉ではありませんが声のお仕事をする業界では「外郎売」などを自宅で毎日なにかしながら暗唱している人も大勢います。なのでやったことがない早口言葉でもレッスンや日々の練習で鍛えた口の動かし方と似たような早口なら初見でもできるようになっているのかもしれません。また練習でその言葉をちゃんと覚えているというのも重要なポイントでしょう。
次の動画内で朝日放送の上田剛彦アナ(46歳 アナウンサー歴22年目)が覚えていると出来そうな早口言葉を披露しています。
歌うたいが歌うたいにきて歌うたえというが、
歌うたいのように歌うたえれば歌うたうが、
歌うたいのように歌うたえぬから歌うたわぬ
上田アナはこの長い68文字を5.4秒ほどで言い切っています。初めて見たときはそのあまりの速さに驚きました。1秒間におよそ12.59文字を読み上げていて、これは前述した青木アナの1秒で11.67文字の早口言葉を1文字分近く上回っています。
しかしこれ、一見難しそうに見えますが実は覚えてから言ってみると意外と口が動いてくれるんです。おそらく覚え辛いから言い辛いというだけで暗記すると難易度が一気に下がるタイプの早口言葉だと思います(先程の瓜売りも同様にそこそこ出来ました。しかし青木アナの早口は覚えても口がうまく動いてくれませんでした)
この早口言葉は言いづらい言葉の滑舌を鍛えるというよりも他の練習用途になっているのかもしれませんね。
そして早口とは少しずれますが、アナウンサーの速読みを挙げたので、せっかくだから声優の速読みも少し調べてみました。
1秒で12文字以上話す声優の凄まじい高速音読技術
竹達彩奈(31歳 芸歴12年)、宮村優子(48歳 芸歴26年)、TARAKO(60歳 芸歴39年)の有名声優三名による高速CM読みの動画。
・75文字(「しょ」などは一文字として計測)
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【竹達彩奈・TARAKO・宮村優子】超有名声優が高難易度の早口言葉に挑戦! 「ムズイ!」思わず本音ポロリ…?
・69文字
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【竹達彩奈・TARAKO・宮村優子】超有名声優が高難易度の早口言葉に挑戦! 「ムズイ!」思わず本音ポロリ…?
この2種類の長文をそれぞれわずか6秒以内で聞きとりやすく言い切っています。これは1秒間にそれぞれ12.5文字と11.5文字を読み切っています。前述の上田剛彦アナの12.59文字に迫る速さです。面白いのは三人ともが一回目はちゃんと言おうとして失敗しても二回目で時間ピッタリに間に合わせてしまっていること。速さを重視すればプロはこの文字数を間に合わせることができてしまうことに驚きます。
このページの最初に紹介していた茜屋日海夏さんの動画でもラストにスタバで一番長いメニューの早口に挑戦しています。
トゥー・ゴー・パーソナル・リストレットベンティ・ツーパーセント・アド・エクストラ・ ソイ・エクストラチョコレート・エクストラホワイトモカ・エクストラバニラ・ エクストラキャラメル・エクストラヘーゼルナッツ・エクストラクラシック・ エクストラチャイ・エクストラチョコレートソース・エクストラキャラメルソース・ エクストラパウダー・ エクストラチョコレートチップ・エクストラロースト・ エクストラアイス・エクストラホイップ・エクストラトッピング・ダークモカチップ・ クリームフラペチーノ
こちらの文字数はなんと208文字。それを16.5秒で言い切っています。そしてこれもまた1秒で12.58文字。
昔、早口で話題になったファンカーゴという車のCMでも15秒という時間で190文字ほどを読み切る高速音読がありましたがそれも計算すると1秒に12.5秒くらい。この12.5秒台がプロの早口滑舌ラインなのかもしれません。
早口のギネス記録は23.8秒で1440文字以上!?
ちなみに世界一の早口としてギネス認定されている人はカナダのショーン・シャノン氏。ハムレットの第三幕第一場の部分の英文で1440文字(※ピリオドや感嘆符込)をなんと23.8秒で読み切ってしまいます。
いきなり最初の「To be or not to be. That is the question.」を1秒かからずに言い切っています。とんでもない早口でちゃんといえてるのかすら私にはもうわかりません。しかもこんな長文を高速で読み続ける口の筋肉にも驚きです。ご高齢でここまで口が回るのは才能だけじゃなく滑舌などトレーニングをしっかりしていることは間違いありません。
真面目そうな人ほど早口言葉が上手い?
朝日放送の藤崎健一郎アナウンサー(47歳 アナウンサー歴24年)による見事な早口言葉。熱闘甲子園のナレーターをしていたり、バラエティより真面目そうな方面のお仕事の比率が高そうな方です。
プロの早口言葉動画をたくさん見ていてふと思ったのが真面目そうな人は成功率が高いという気がしています。見た目は関係ないんですが日々滑舌の練習している真面目な人ほど上手くできるのは間違いありません。
テレビでは真面目キャラで売っているのに早口が上手く言えない人は裏で練習をサボッている不真面目な人だったりするのかもしれないし、逆に遊んでそうなイメージの人が早口をスラスラ言えると実は影で普通の人より練習をたくさんしているというギャップ萌えな目で見てしまいそうです
今回紹介した中には60歳以上の方もいました。高齢になると普通の人なら口が回らなくなるものですがプロとして若手に負けない見事な早口を披露しています。
ドラゴンボールでも有名な野沢雅子さんは84歳というお歳ですが未だに現役声優として第一線で活躍しています。一時期滑舌が怪しいと言われていましたがドラゴンボール超が放送されて回を重ねるうちにどんどん滑舌がよくなって視聴者を驚かせていました。日々練習していると滑舌の衰えをかなり抑えてハキハキと喋ることができるようになるという証明ですね。
滑舌のプロでもみんながみんな早口言葉が上手というわけではないという結果でした。あくまで一般的な喋りを聞き取りやすくする目的のレッスンが多いのかもしれません。しかしそれでも普通の人と比べたらはるかに上手い人ばかりでした。普通ではありえない高速早口も特殊な練習をしているからこそ出来る神業。その道のプロはやはりすごかったですね。
最後に個人的主観ですが全体的に見てアナウンサーのほうが早口言葉が得意な気がします。生放送も多く噛むことが許されないという職業柄、滑舌トレーニングの比率が高いのではないでしょうか。
声優は役者として演技力も磨かなければいけないので滑舌の練習ばかりするというわけには行かず仕方ないかもしれません。しかしスピードだけで言えば声優の方々のほうが早く言ってやろうという攻めの姿勢が強めな方が多く、全力でやりきる姿は見ていて楽しかったです。
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