【日本に世界で唯一のモアイ像】世界に二体しかない内の一体が日本に?日本への「恩返し」と「魂(マナ)」の物語

文化

遥か15,000kmの彼方から!日本に「世界で唯一公認」のモアイ像が立つ理由

モアイ像と聞くと、多くの人が南太平洋に浮かぶ絶海の孤島、チリ領イースター島(ラパ・ヌイ)を思い浮かべるでしょう。しかし、驚くべきことに、この神聖で門外不出の文化財であるモアイ像を、世界で唯一、イースター島の長老会から正式に復刻・建立を許された場所が日本に存在します。それが、宮崎県日南市にある観光施設「サンメッセ日南(Sunmesse Nichinan)」です。

サンメッセ日南に立つ7体のモアイ像は、単なる精巧なレプリカではありません。彼らはイースター島の歴史と文化を背負い、「イースター島からの恩返し」という壮大な物語の象徴として、太平洋を見つめて立っているのです。なぜ、地球の裏側の島が、日本にこのような特別な許可を与えたのでしょうか。その答えは、数十年前、日本人が行った「ある偉業」にあります。

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モアイに「魂(マナ)」を戻した日本のクレーン技術

サンメッセ日南のモアイ像の誕生は、1990年代初頭に遡る、心温まる「恩返し」のエピソードに基づいています。

1960年のチリ地震とそれに伴う大津波、そしてその後の部族間の抗争により、イースター島の多くのモアイ像は倒壊し、見るも無残な姿となっていました。特に島南部にあるアフ・トンガリキと呼ばれる祭壇に並んでいた15体のモアイ像は、巨大な石像が無残に倒れ、荒廃したまま長年放置されていたのです。観光客は減少の一途をたどり、島民も自国の文化遺産が破壊されている光景に心を痛めていました。

この窮状を救うべく立ち上がったのが、日本の「モアイ修復委員会」と、建設用クレーンメーカーである「株式会社タダノ」です。彼らはチリ政府やイースター島の博物館と協力し、1992年から3年間にわたる大規模な修復プロジェクトを開始しました。

巨大モアイを大地に立たせた「奇跡の技術」

モアイ像は高さ約5.5メートル、重さは約20トンにも及びます。これらの巨大な石像を再び垂直に立て直す作業は、想像を絶する困難を極めました。当時の島には、これほどの重機や技術力はありません。

ここで日本のタダノ社の巨大クレーンがその真価を発揮します。日本の高度なクレーン技術と、石の専門家である石工たちの知恵が結集し、ついに倒れていた15体のモアイ像すべてを大地に立たせることに成功しました。

この成功は、単なる修復作業の完了以上の意味を持っていました。イースター島の信仰において、モアイ像には「マナ(霊力・魂)」が宿るとされています。モアイが倒れることは「マナ」が失われること、すなわち守護神を失うことを意味しました。

日本の技術によってモアイが再び立ち上がった光景を見たラパ・ヌイの長老会は、深い感動と畏敬の念をもって、この偉業を称えました。長老たちは「あなたたち日本人は、モアイに再び魂を宿らせてくれた。これは奇跡だ」と心から感謝したと言われています。

世界で唯一「完全復刻」が許された宮崎の地

この深い感謝の念から、長老会は日本の修復チームに対し、門外不出だったモアイ像の「完全復刻」を世界で唯一、正式に許可しました。これが「モアイ修復への恩返し」として日本に贈られた特別な贈り物です。

復刻の地に選ばれたのが、イースター島の景観に似た雄大な海岸線を持つ宮崎県日南市でした。こうしてサンメッセ日南には、イースター島のアフ・アキビを模した7体のモアイ像が、故郷の海を背にして並び立つことになったのです。彼らが海を背にして立っているのは、イースター島のモアイが海を見つめているのに対し、「遥か故郷を思って立っている」という特別な意味が込められていると言われています。

サンメッセ日南:7体のモアイが持つ「運気上昇」のパワー

サンメッセ日南に立つ7体のモアイ像は、それぞれが異なる「運気上昇の象徴」として設定されています。これは観光客にとって大きな魅力となっており、「願いを込めて触る」という習慣が生まれています。

モアイの順番(左から)象徴する運気触れるご利益
1体目仕事運キャリアアップ、商売繁盛、起業成功
2体目健康運病気平癒、無病息災、心身の健やかさ
3体目恋愛運素敵な出会い、恋の成就、愛の継続
4体目全体運夢が叶う、全てが好転する、道が開ける
5体目金運財運向上、臨時収入、豊かさの獲得
6体目勝負運試験合格、試合の勝利、運命の好転
7体目学業運成績向上、資格取得、知恵の獲得

観光客の間では、最も叶えたい願いを持つモアイに手を当て、モアイ像から放出されるとされる「マナ(霊力)」を感じ取ろうとする光景が見られます。この「触れることができる公認モアイ」という体験は、サンメッセ日南が世界に誇る最大の魅力の一つです。

宮城・南三陸町:世界に2つだけの「眼」が入った寄贈モアイ像の絆

公認モアイが「恩返し」の象徴であるならば、宮城県南三陸町に立つモアイ像は、「大災害を乗り越えた友情と復興の絆」の象徴です。

南三陸町のモアイ像は、サンメッセ日南の「復刻」とは異なり、イースター島の石を使い、現地で彫られた「本物の石材による寄贈モアイ」という、極めて特殊な地位を持っています。

「チリ地震津波」から始まる南三陸との運命

南三陸町とチリ共和国の間には、古くから「津波の絆」が存在します。1960年、チリで発生した巨大地震による津波は、遠く離れた日本の太平洋沿岸、特に南三陸町に甚大な被害をもたらしました。海の向こうの災害がもたらした悲劇を、両国は歴史として共有しています。

そして2011年、東日本大震災が発生し、再び南三陸町は壊滅的な被害を受けました。この時、チリ政府とイースター島の長老たちは深い共感を寄せました。かつてチリ津波で被害を受けた日本への支援は、彼らにとって歴史的な運命の再来でもあったのです。

世界で2体しかない「眼」の力(マナ)

2013年、チリ政府は復興を目指す南三陸町に対し、「マナ(霊力)を与え、復興を見守る存在」として、特別なモアイ像を贈呈することを決定します。

このモアイ像の最大の特徴は、「眼」が入っていることです。イースター島の信仰では、モアイ像に眼を入れることで神聖な「マナ(霊力)」が宿り、守護神として機能するとされています。このため、眼の入ったモアイ像は極めて神聖視され、島外に出ることは門外不出とされてきました。

南三陸町に寄贈されたモアイ像は、白珊瑚と黒曜石で作られた眼が入っており、これは世界に2体しかない(もう1体はイースター島内)という、文字通り「奇跡」の存在です。

寄贈式典では、イースター島の長老が「眼を入れることでマナがモアイに宿る。南三陸の悲しみを鎮め、人々が再びそこで生きていきたいと思えるように見守ってくれるだろう」という願いを込めて、眼入れの儀式を行ったとされています。

この南三陸町のモアイ像は、単なる友好のシンボルではなく、津波の悲劇を乗り越える人々へ、遠い故郷の神聖な霊力を託した「魂の守護者」として、志津川湾を背に立ち続けているのです。

他にもある!日本の「非公認」モアイ像スポット一覧

※札幌「真駒内滝野霊園」のモアイ像

公認モアイや寄贈モアイの壮大な物語がある一方で、日本国内には、イースター島とは直接的な関係はないものの、個性的な魅力を放つ「非公認モアイ像(レプリカ)」が数多く存在します。モアイ像は古代の遺産であるため、著作権などの制限がなく、誰でも自由に「モアイ風像」を作ることが可能です。

ユニークな非公認モアイ像は、しばしば地域の珍スポットやSNS映えスポットとして人気を集めています。

北海道・東北地方

  • 北海道・札幌市「真駒内滝野霊園」
    • 最大規模モアイ群として知られ、高さ9.5m、重さ120tの巨大モアイ像が多数(33体とも)並びます。
    • 世界的な建築家・安藤忠雄氏設計の頭大仏やストーンヘンジと並んでおり、独特の異世界観がSNSでも人気を博しています。霊園の平和祈願の象徴として建立されました。
  • 福島県・いわき市「スパリゾートハワイアンズ」
    • 南国リゾートというテーマに合わせて、プール施設の一角に設置された装飾モアイです。
    • 材質は**FRP(樹脂製)**で、純粋に南国ムードを盛り上げるためのレプリカとして、写真撮影スポットになっています。

関東地方

  • 東京都・杉並区「高円寺 モアイ像」
    • 商店街の真ん中に突如立つ、異色のモアイ像です。
    • 元々は飲食店の装飾として設置されたものが残ったと言われています。地元民の間では**「モアイ前」が有名な待ち合わせ場所**として親しまれています。

東海地方

  • 愛知県・犬山市「リトルワールド」
    • 世界の建築を再現したテーマパーク内に、イースター島のモアイ像エリアとしてレプリカが展示されています。
    • 世界の文化に触れるための学習・体験用のレプリカとして、現地の雰囲気を伝えています。

中国地方

  • 岡山県・笠岡市「カブトガニ博物館前」
    • チリ・イースター島の市長から**「友好の証」として公式に寄贈された**モアイ像です。
    • 公認復刻(サンメッセ日南)ではないため「非公認」に分類されますが、寄贈経緯が公式であり、非公認モアイの中では特殊な存在です。

まとめ:モアイが繋ぐ、日本と世界の特別な絆

日本に存在するモアイ像は、単なる珍しい観光スポットに留まらず、人類の歴史における「復興」「恩返し」「友好」という深いテーマを背負っています。

  • 公認モアイ(宮崎):日本の技術がイースター島の「魂の復活」を助けたことへの、世界で唯一の「恩返し」
  • 寄贈モアイ(宮城):二度の津波の悲劇を乗り越える人々への、「マナ(霊力)の守護」を託した絆の象徴。
  • 非公認モアイ(全国):文化の自由な解釈と、地域を盛り上げるためのユニークな「多様な表現」

この夏、宮崎の青い空の下で「運気上昇」のモアイに触れても、南三陸の海辺で「魂の守護」を願うモアイを見つめても、日本のモアイ像が持つ奥深い物語を知ることで、旅の感動はさらに深まるでしょう。

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