犬は私たち人間よりもずっと早く歳を取ります。10歳を超えれば高齢犬と呼ばれることも多いなか、世界には20歳どころか30歳近くまで生きた犬がいました。
世界一長生きした犬として長年ギネス世界記録に認定されてきたのが、オーストラリアの「ブルーイ」です。その年齢は、なんと29歳5か月。
ところが2023年、ポルトガルの「ボビ」が31歳という驚異的な年齢でブルーイの記録を更新。一躍世界的に有名になりました。
しかし、ボビの死後に事態は一転します。年齢を証明する証拠について疑問が生じ、ギネス世界記録はボビの記録を取り消したのです。
ちなみに、2020年11月12日時点で「存命中の世界最高齢犬」として認定されていたのは、21歳169日のミニチュア・ダックスフンド「ファニー」でした。
今回は、世界一長生きした犬として知られるブルーイと、一度はその記録を更新したボビについて紹介します。
世界一長生きした犬「ブルーイ」は29歳5か月

現在、世界一長生きした犬として広く知られているのが、オーストラリアン・キャトル・ドッグの「ブルーイ(Bluey)」です。
ブルーイは1910年、オーストラリア・ビクトリア州のロチェスターでホール家に子犬として迎えられました。
そして1939年11月14日、29歳5か月でその生涯を終えています。
驚くのは、ただ長生きしただけではないことです。
ブルーイは牧場で牛や羊を追う牧畜犬として、約20年間働いていたとされています。
29歳という年齢だけを見ると、晩年まで大切に飼われていた小型の愛玩犬を想像するかもしれません。しかしブルーイは、長い間牧場で仕事をしていた犬だったのです。
その驚異的な長寿はギネス世界記録にも認定され、ブルーイは長年「史上最も長生きした犬」として知られることになりました。
ブルーイの基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 名前 | ブルーイ(Bluey) |
| 犬種 | オーストラリアン・キャトル・ドッグ |
| 生年 | 1910年 |
| 死亡 | 1939年11月14日 |
| 年齢 | 29歳5か月 |
| 暮らした場所 | オーストラリア・ビクトリア州ロチェスター |
| 特徴 | 約20年間、牛や羊を扱う牧畜犬として働いた |
ブルーイが亡くなったのは1939年。第二次世界大戦が始まった年です。
それほど昔の犬が、80年以上にわたって世界記録として語り継がれてきたことからも、29歳という年齢がいかに異例だったのかが分かります。
84年ぶりに現れた「ボビ」
そんなブルーイの記録を破ったとして、2023年に世界中でニュースになった犬がいました。
ポルトガルの「ボビ(Bobi)」です。
ボビは家畜を守るために飼育されてきたポルトガル原産の犬種「ラフェイロ・ド・アレンティジョ」。
1992年5月11日に生まれたとされ、ポルトガル中部の村コンケイロスで、コスタ一家とともに生涯を過ごしました。
2023年2月、ギネス世界記録はボビを30歳266日で「存命中の世界最高齢犬」と「史上最高齢の犬」に認定。
これによってブルーイが約84年間保持してきた記録が、ついに更新されたのです。
ボビはその後、2023年5月11日に31歳の誕生日を迎えました。
誕生日には100人を超える人々が参加するパーティーまで開かれ、海外から訪れた参加者もいたといいます。
そして2023年10月20日、ボビは動物病院で亡くなりました。
当時発表された年齢は、
31歳165日。
ブルーイを約2年も上回る、とてつもない記録でした。

ボビの基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 名前 | ボビ(Bobi) |
| 犬種 | ラフェイロ・ド・アレンティジョ |
| 生年月日 | 1992年5月11日とされていた |
| 死亡 | 2023年10月20日 |
| 年齢 | 31歳165日とされていた |
| 暮らした場所 | ポルトガル・コンケイロス |
| ギネス認定 | 2023年2月 |
| 現在の記録 | 2024年に取り消し |
ボビはどんな暮らしをしていた?

ボビの飼い主レオネル・コスタさんは、その長寿についていくつかの理由を挙げていました。
ボビは生涯を通してポルトガルの静かな田舎で生活し、自由に周辺の森や農地を歩き回っていたとされています。
また、とても社交的な性格で、他の動物たちと一緒に暮らしていました。
高齢になって歩くことが難しくなってからは、庭で猫たちと過ごすことも多かったそうです。
食事についても特徴的で、飼い主によればボビは家族と同じ食べ物を、水に浸して味付けを薄くした状態で食べていたといいます。
ただし、こうした生活や食事が「31歳まで生きた原因」だったと科学的に証明されたわけではありません。
ボビの母犬ギラも18歳まで生き、同じ家庭で飼われていた別の犬チコテも22歳まで生きたとされており、遺伝的な要素を含めさまざまな要因が考えられます。
ところがボビの世界記録に疑問の声が

31歳165日という驚異的な記録を残して亡くなったボビ。
ところが、ボビの死後、その年齢について獣医師や専門家などから疑問の声が上がるようになります。
そして2024年1月、ギネス世界記録は「史上最高齢の犬」と「存命中の最高齢犬」の記録認定を一時停止し、ボビの記録について正式な再調査を開始しました。
調査では、ボビの年齢を証明するために使われた資料が改めて検証されました。
特に問題になったのが、ポルトガル政府公認のペットデータベース「SIAC」に登録されていた情報です。
ボビの年齢を証明する重要な資料のひとつでしたが、ギネスによると、古い犬については登録時に年齢を裏付ける証拠を求める仕組みが十分ではなかったことが分かりました。
つまり、
「データベースに1992年生まれと書いてある」ことと、「1992年に生まれたことが客観的資料で証明されている」ことは同じではなかった
のです。
2024年、ボビの世界記録は正式に取り消された

2024年2月22日、ギネス世界記録は調査結果を発表しました。
結論は、
「ボビを史上最高齢の犬として認め続けるために必要な証拠がない」
というものでした。
これによって、ボビの世界記録は正式に取り消されることになります。
ここで注意したいのは、
「ボビが31歳ではなかったことが証明された」わけではない
という点です。
ギネスが判断したのは、あくまで「31歳だったと証明するだけの十分な証拠がない」ということ。
そのため、「実際には何歳だったのか」についても、はっきりした答えは出ていません。
また、ギネスの調査結果は、飼い主が意図的に年齢を偽ったと認定したものでもありません。
「31歳という年齢が嘘だった」と断定するよりも、
「31歳という年齢を世界記録として認定できるだけの証拠が不足していた」
と理解するのが正確でしょう。
ボビの記録が取り消されたのは死後
ボビの記録が取り消されたタイミングも少し珍しいものでした。

ボビが亡くなったのは2023年10月20日。
その時点ではまだギネス世界記録保持者であり、ギネス自身も「史上最高齢の犬が31歳165日で亡くなった」と発表していました。
その後に疑問が強まり、再調査が始まったのです。
流れを整理すると、
2023年2月
30歳266日で史上最高齢の犬として認定
↓
2023年5月
31歳の誕生日を迎える
↓
2023年10月20日
31歳165日で亡くなったと発表
↓
2024年1月
ギネスが記録を一時停止し再調査
↓
2024年2月22日
証拠不十分として記録を正式に取り消し
となります。
つまりボビは、生きている間は世界最高齢犬として扱われ、そのまま亡くなりました。
記録が取り消されたのは死後約4か月たってからです。
ブルーイとボビの年齢を人間に換算すると?

ブルーイの29歳5か月、そしてボビの31歳165日。
犬として驚異的な年齢ですが、人間の年齢に置き換えるとどれくらいなのでしょうか。
昔からよく知られているのが、
「犬の年齢×7=人間の年齢」
という換算方法です。
この単純な計算を二匹に当てはめてみると、
ブルーイ:29歳5か月 × 7 = 約206歳
ボビ:31歳165日 × 7 = 約220歳
となります。
人間ならどちらも200歳を超える計算です。
特にボビは、申告されていた年齢が正しければ、単純換算で約220歳という途方もない数字になります。
「犬の1年=人間の7年」はあくまで目安
ただし、この「×7」という計算は、犬の実際の老化を正確に人間の年齢へ換算したものではありません。
犬は生まれてから最初の数年間に急速に成長します。また、成犬になってからの老化速度も一定ではなく、犬種や体格などによって違いがあります。
そのため現在では、すべての犬について単純に「犬の1年=人間の7年」と考えることはできないとされています。
つまり、ブルーイが実際に「人間の206歳と同じ状態だった」という意味ではありません。
それでも、29歳や31歳という犬の年齢がどれほど異例なのかをイメージするための、昔ながらの分かりやすい目安にはなるでしょう。
なお、ボビの31歳165日という年齢は、後にギネス世界記録から取り消されています。
これは「31歳ではなかった」と証明されたためではなく、31歳だったことを世界記録として認めるための十分な証拠が確認できなかったためです。
そのため、ボビの「人間なら約220歳」という数字についても、
「31歳165日という申告年齢が正しかった場合の単純換算」
となります。
ブルーイとボビを比較
二匹の記録をまとめると、次のようになります。
| ブルーイ | ボビ | |
|---|---|---|
| 犬種 | オーストラリアン・キャトル・ドッグ | ラフェイロ・ド・アレンティジョ |
| 国 | オーストラリア | ポルトガル |
| 生年 | 1910年 | 1992年とされていた |
| 年齢 | 29歳5か月 | 31歳165日とされていた |
| ギネス記録 | 認定 | 2024年に取り消し |
| 特徴 | 約20年間牧畜犬として働く | 田舎で自由に暮らし、他の動物とも生活 |
| ×7での単純換算 | 約206歳 | 約220歳※ |
※ボビの年齢は証明不十分として世界記録が取り消されています。また、×7による人間年齢への換算はあくまで昔ながらの簡易的な目安です。
二匹に共通しているのは、都会ではなく自然の多い環境で暮らしていたことです。
一方で、これだけを根拠に「田舎で暮らせば犬は長生きする」「人間の食事を与えれば長生きする」と考えることはできません。
特に人間用に味付けされた食品には犬に適さないものもあるため、ボビやブルーイの食生活をそのまま真似するべきではありません。
二匹のエピソードは、あくまで「非常に長生きした犬がどのように暮らしていたのか」という記録として見る必要があります。
結局、世界一長生きした犬はブルーイ?
現在、確かな記録として世界一長生きした犬を挙げるなら、29歳5か月まで生きたブルーイです。
一時はボビが31歳165日でブルーイを上回りましたが、その年齢を裏付ける証拠が不十分だったため、ギネス世界記録から取り消されました。
ただし、ボビが本当に31歳だった可能性まで否定されたわけではありません。
そのため二匹については、
ブルーイ:29歳5か月まで生きたことが認められている世界的な長寿犬
ボビ:31歳165日まで生きたとされ、一度は世界記録に認定されたものの、後に証拠不十分で取り消された犬
と区別すると分かりやすいでしょう。
よくある質問
世界一長生きした犬は何歳ですか?
確かな記録として広く知られているのは、オーストラリアン・キャトル・ドッグのブルーイです。29歳5か月まで生きました。
31歳まで生きた犬はいなかったのですか?
ポルトガルのボビが31歳165日まで生きたとして、2023年にギネス世界記録に認定されました。しかし年齢を証明する証拠が十分ではないとして、2024年に記録が取り消されています。
ボビの31歳は嘘だったのですか?
31歳ではなかったと証明されたわけではありません。
ギネス世界記録の調査では、ボビが31歳だったことを世界記録として認定するために必要な証拠が不足していると判断されました。実際の年齢については分かっていません。
ボビの記録はいつ取り消されたのですか?
ボビが亡くなった後です。
ボビは2023年10月20日に亡くなり、ギネス世界記録が正式に記録を取り消したのは2024年2月22日でした。
ブルーイはどんな犬でしたか?
オーストラリアン・キャトル・ドッグで、オーストラリアの牧場で牛や羊を追う牧畜犬として約20年間働いていました。
犬の29歳は人間なら何歳ですか?
昔ながらの「犬の年齢×7」という単純な計算なら約206歳です。
ただし、犬と人間では成長や老化の速度が異なり、犬種や体格によっても違いがあるため、実際に「人間の206歳と同じ」という意味ではありません。
まとめ
世界一長生きした犬として長年知られてきたブルーイは、29歳5か月まで生きました。
そこへ2023年、31歳という驚異的な年齢のボビが登場し、約84年ぶりに世界記録が更新されます。
しかしボビの死後に年齢確認の方法について疑問が生じ、ギネス世界記録が再調査。その結果、31歳という年齢を世界記録として認めるための十分な証拠がないとして、2024年に記録は取り消されました。
結果として再び注目されることになったのが、29歳5か月まで生きたブルーイです。
一般的な犬の寿命をはるかに超えて生きたブルーイと、一時は31歳というさらに驚異的な記録を打ち立てたボビ。
どちらも世界中の人々を驚かせた、犬の長寿史を語るうえで忘れられない存在といえるでしょう。


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