まさかの脱輪!その時どうする?
「JAFを呼ぶべきか?」「レッカー車を待つべきか?」と焦ってしまう気持ちはよく分かります。しかし、状況によっては、専門業者の助けを借りずに、ドライバー自身の力で脱出できる場合があります。
元整備士が教えてくれる具体的な側溝からの脱出方法を解説しています。いざという時に役立つ知識を身につけて、冷静かつ安全に対処できるよう備えておきましょう。
脱輪の現状把握:安全確保と状況確認が最優先
側溝に脱輪してしまったら、まず何よりも大切なのは安全確保です。慌てて行動を起こす前に、以下の点を確認しましょう。
交通状況の確認と二次災害の防止
脱輪した場所が交通量の多い道路であれば、ハザードランプを点灯させ、後続車に注意を促しましょう。可能であれば、発炎筒や停止表示板を設置して、他の車両からの視認性を高めることも重要です。これは、二次的な事故を防ぐための義務でもあります。特にカーブの途中や見通しの悪い場所での脱輪は、追突事故のリスクが高まるため、迅速かつ安全な処置が求められます。夜間であれば、さらに慎重な対応が必要です。
車両の状態確認:下回りの損傷と液体漏れの有無
脱輪の際、車体は側溝の縁や地面に衝突している可能性が高いです。そのため、脱出作業に取り掛かる前に、必ず車の下回りを点検してください。エンジンオイルや冷却水、ブレーキフルードなどの液体が漏れていないか、目視で確認することが非常に重要です。もしこれらの液体が漏れている場合、無理に動かすとさらなる故障を引き起こしたり、最悪の場合は車両火災につながる危険性もあります。特にオイル漏れはエンジンの焼き付きを招く恐れがあるため、少しでも異常を感じたら、自力での脱出は諦め、プロの助けを求めるべきです。また、マフラーやサスペンション、燃料タンクなどに損傷がないかも確認しましょう。
脱輪したタイヤの位置と駆動方式の確認
自力での脱出が可能かどうかは、どのタイヤが側溝に落ちたか、そして車の駆動方式によって大きく異なります。
- 前輪駆動(FF)車: 前輪が側溝に落ちた場合、この記事で紹介する自力での脱出方法が比較的有効です。FF車はエンジンの駆動力が前輪に伝わるため、脱輪していない側の前輪や、後輪のグリップを使って脱出を試みやすい特性があります。
- 後輪駆動(FR)車: 後輪が落ちた場合、FF車に比べて自力での脱出は難しくなる傾向があります。駆動輪である後輪が側溝に嵌まってしまうと、動力を地面に伝えにくいためです。
- 四輪駆動(4WD)車: 4WD車は、すべてのタイヤに駆動力を伝えられるため、脱輪からの脱出能力は高いですが、状況によってはやはり専門の知識や道具が必要になることもあります。
- 左右どちらかの前輪: 片側の前輪のみが脱輪した場合、まだ比較的脱出しやすい状況と言えます。
- 左右両方の前輪: 動画で解説されているように、左右両方の前輪が落ちた場合でも、特定の操作で脱出できる可能性があります。
もし、後輪が深く落ちている場合や、左右両方のタイヤが側溝に深く嵌まり込んでしまっている場合は、無理な自力脱出はかえって車体を損傷させる原因となります。このような場合は、ロードサービス(JAFや任意保険の付帯サービスなど)に連絡し、専門業者に依頼するのが最も賢明な判断です。
基本の脱出術:バックでゆっくりと、これが王道
側溝に脱輪した際の基本的な脱出方法は、バックでゆっくりと、そして慎重に行うことです。この方法は、特に前輪駆動(FF)車で、前輪が側溝に落ちた場合に高い効果を発揮します。
ハンドル操作の秘訣:脱輪側とは逆へ切る
脱輪したタイヤがある側とは逆方向に、ハンドルをいっぱいに切るのがポイントです。例えば、左側の前輪が側溝に落ちた場合、ハンドルを右に目一杯切ります。これは、タイヤの向きを側溝の縁に対して斜めにすることで、地面に接しているタイヤに効率的に駆動力を伝え、側溝の縁を乗り越えやすくするためです。
この操作により、脱輪していない側のタイヤ(例えば右前輪)が、より広い接地面積と摩擦を得て、車体を動かす力を生み出しやすくなります。また、側溝の縁にタイヤが引っかかりにくく、スムーズに乗り上げられる角度を作り出す効果もあります。
ギアは「R(リバース)」、アクセルは「ゆっくり」
ハンドルをいっぱいに切った状態で、ギアを「R(リバース)」に入れます。そして、アクセルをゆっくりと、慎重に踏み込みます。急激なアクセルワークは、タイヤの空転を招くだけでなく、車体をさらに側溝に深くはめ込んでしまったり、下回りを損傷させたりする原因になります。
ゆっくりとアクセルを踏み込むことで、駆動力がじわじわとタイヤに伝わり、車体が少しずつ動き出します。この際、焦らず、タイヤが側溝の縁を乗り越える感触を確かめながら、慎重に操作を続けることが重要です。
なぜバックが有効なのか?
多くの場合、脱輪は前向きに走行中に起こります。そのため、タイヤは側溝の縁に対して、ある程度前方に引っかかっている状態です。この状態で無理に前進しようとすると、タイヤがさらに深く側溝に食い込んだり、車体の下部が側溝の縁に乗り上げてしまい、フロアが破損するなどのリスクが高まります。
しかし、バックで動かすことで、タイヤが側溝の縁から離れる方向に力が加わり、比較的スムーズに縁を乗り越えやすくなります。また、前輪駆動車の場合、バックすることで後輪が支点となり、前輪を持ち上げるような動きを補助する効果も期待できます。
応用編:前進とバックの連携で難所を攻略
基本的なバックでの脱出が難しい場合、例えばタイヤが側溝の側面に深く当たっている、または側溝の深さや形状が複雑で乗り越えにくいといった状況では、前進とバックを組み合わせた応用的な脱出方法が有効です。この方法は、側溝の縁を乗り越えるための足がかりを意図的に作り出すテクニックと言えるでしょう。
前進でタイヤの位置を調整
まず、基本的な方法と同様に、ハンドルを脱輪した側とは逆方向にいっぱいに切ります。その状態で、ギアを「D(ドライブ)」に入れ、ゆっくりと前進します。この時の目的は、無理に脱出することではなく、タイヤを側溝の縁に沿わせて、少しでも上方向に移動させることです。
具体的には、タイヤが側溝の縁に乗り上げやすい、あるいは乗り越えやすいと思われるポイントまで、少しずつ車体をずらしていきます。この際、タイヤが側溝の側面をこすりながら動くため、摩擦抵抗を感じることがありますが、無理な力でアクセルを踏み込むのは避けてください。あくまで、バックでの脱出に有利な「体勢」を作るための前進です。タイヤが側溝の端に乗り越えられそうな位置まで来たら、一度停止します。
切り返し:ハンドルをさらに目一杯切る
タイヤが最も乗り越えやすい位置に来たと判断したら、停車した状態でハンドルをさらに目一杯、先ほどと同じ脱輪側とは逆方向に切り込みます。この操作により、駆動輪(前輪駆動車であれば前輪)の角度が、側溝の縁に対して最も効率的なアプローチ角度になります。
逆方向へバック:側溝を乗り越える
ハンドルを最大限に切った状態で、ギアを「R(リバース)」に入れます。そして、再びゆっくりとアクセルを踏み込み、バックを開始します。
この「前進して体勢を整え、ハンドルを切り返してバックする」という一連の動作には、以下のようなメカニズムが隠されています。
- 側溝の幅とタイヤ幅の利用: タイヤを側溝の縁に沿って動かすことで、タイヤと側溝の縁が接するポイントが変わります。適切な位置でハンドルを切り、バックすることで、タイヤが側溝の幅よりも実質的に大きくなるような錯覚を作り出し、側溝を乗り越えやすくなります。
- 慣性の利用: ゆっくりと前進し、切り返してバックすることで、車体のわずかな慣性力も脱出を助ける力として利用できる可能性があります。
- グリップの確保: タイヤの角度を調整することで、地面に接しているタイヤ(脱輪していないタイヤや、側溝の縁に引っかかったタイヤの一部)がより多くのグリップ力を発揮しやすくなります。
この方法は、ジャッキアップなどの大変な作業をすることなく、またレッカー車を待つ時間も短縮できるため、覚えておくと非常に役立ちます。ただし、あくまで自己責任で行うこと、そして無理はしないことが大前提です。少しでも危険を感じたら、すぐに作業を中断し、プロに依頼することを躊躇しないようにしましょう。
脱出後の最終確認と注意点:安心のためのチェックリスト
無事に側溝から脱出できたとしても、そこで全てが終わるわけではありません。トラブルから完全に回復し、安全なドライブを再開するためには、いくつかの重要な最終確認が必要です。
車体の下回り再点検
脱出作業中、再び車体が地面や側溝の縁に接触し、新たな損傷が発生している可能性があります。脱出後には、必ずもう一度、車体の下回りを丁寧に点検してください。特に、マフラー、サスペンションアーム、燃料パイプ、ブレーキライン、そして各種センサー類に異常がないかを確認することが重要です。
- 液体漏れの再確認: オイルや冷却水などの漏れが再発していないか、あるいは新たな漏れが発生していないかを注意深く確認します。
- 異音の有無: エンジンをかけた際に、普段とは違う異音(ガタガタ、ゴトゴトといった打音や、こすれるような音)がしないか耳を傾けます。
- パーツの緩みや損傷: タイヤハウスの内側、バンパーの取り付け部分、その他目視できる範囲でパーツが緩んでいないか、または破損していないかをチェックします。
タイヤとホイールの損傷確認
脱輪や脱出作業によって、タイヤのサイドウォールに亀裂が入ったり、ホイールが変形したりすることがあります。タイヤの損傷は、走行中のバースト(破裂)につながる危険性があるため、特に注意が必要です。
- タイヤのサイドウォール: 側面に目に見える亀裂や膨らみがないかを確認します。
- トレッド面: 異物が刺さっていないか、異常な摩耗がないかをチェックします。
- ホイール: 歪みや欠けがないかを確認します。特に縁石と接触しやすいリム部分を重点的に見ましょう。
- 空気圧: タイヤの空気圧が正常範囲内にあるかを確認します。できれば空気圧計で正確に測るのが理想です。
走行テストとアライメントの確認
目視での点検で問題がなかったとしても、実際に走行してみないと分からない不具合もあります。安全な場所で、ゆっくりと走行テストを行いましょう。
- 直進性: ハンドルをまっすぐにして走行した際に、車体が左右どちらかに流れていかないかを確認します。もし車体が真っ直ぐ進まない場合、アライメント(タイヤの取り付け角度)が狂っている可能性が高いです。
- ブレーキの効き: ブレーキペダルを踏んだ際に、異音や振動がないか、制動力が均一に伝わっているかを確認します。
- 異音や振動: 走行中に普段とは違う異音や振動がないかを注意深く確認します。
- メーター類の異常表示: エンジンチェックランプやABS警告灯など、警告ランプが点灯していないかを確認します。
もし走行テストで少しでも違和感を感じたり、アライメントの狂いが疑われる場合は、速やかに専門の整備工場で点検してもらうことを強くお勧めします。アライメントの狂いは、タイヤの偏摩耗を促進させるだけでなく、走行安定性を損ない、思わぬ事故につながる危険性があるからです。
脱輪を未然に防ぐための予防策:安全運転の心がけ
車のトラブルの中でも、脱輪はドライバーの心がけ一つで未然に防ぐことができることが多いです。日頃からの安全運転を心がけることが、最も重要な予防策となります。
狭い道や路側帯の状況確認
見慣れない道や、道幅の狭い場所を走行する際は、特に注意が必要です。対向車とのすれ違い時や、駐車する際に焦ってハンドルを切ると、側溝に落ちてしまうリスクが高まります。
- 速度を落とす: 狭い道では、速度を落としてゆっくりと走行しましょう。視認できる範囲が狭くなるため、より慎重な運転が求められます。
- 路側帯の確認: 側溝の蓋が外れていたり、蓋が破損していたりする場所もあります。路側帯の状況をよく確認し、危険な場所は避けて走行しましょう。
- カーブの注意: カーブを曲がる際、特に外側に側溝がある場合は、内輪差と外輪差を意識し、余裕を持ったライン取りを心がけることが大切です。
- 夜間の視界: 夜間は視界が悪くなるため、側溝の存在に気づきにくいことがあります。ヘッドライトの届く範囲を注意深く確認し、必要に応じてフォグランプなども活用しましょう。
運転技術の向上と死角の意識
基本的な運転技術を磨くことも、脱輪防止につながります。特に、車両感覚(車の幅や長さ)を正確に把握することは非常に重要です。
- 車両感覚の練習: バック駐車や縦列駐車など、車両感覚を養う練習を日頃から行いましょう。自宅の駐車場などで、目標物を設定して練習するのも効果的です。
- サイドミラーとバックモニターの活用: サイドミラーやバックモニター、最近の車では360度カメラなども活用し、死角を減らす努力をしましょう。特に、車の後方や側面の下部は死角になりやすいので、常に意識することが大切です。
- 目視確認の徹底: ミラーやモニターだけに頼らず、必要に応じて窓を開けて直接目視で確認することも重要です。特に細い道や路肩に寄せる際は、一度停止して確認するくらいの慎重さが必要です。
駐車時の注意
駐車場での脱輪も意外と多いトラブルです。
- 駐車スペースの確認: 駐車する際は、周囲の状況をよく確認し、側溝や段差がないかを確認しましょう。
- バック駐車の活用: バック駐車は、前向き駐車よりも車両感覚を掴みやすく、また出庫時の安全性が高まるメリットもあります。
- 焦らない: 焦って駐車しようとすると、判断ミスや操作ミスにつながりやすくなります。ゆっくりと、落ち着いて駐車することを心がけましょう。
ロードサービスの活用:プロに任せる安心感
自力での脱出が難しい場合や、車両の損傷が疑われる場合は、無理をせずプロのロードサービスに依頼することが最も安全で確実な選択肢です。無理な脱出作業は、さらなる車両の損傷や、ドライバー自身の怪我につながる可能性があります。
JAFのサービス
JAF(日本自動車連盟)は、自動車ユーザーなら誰もが知るロードサービスの代表格です。会員になれば、原則として年間回数制限なく、バッテリー上がり、パンク、キー閉じ込み、そして脱輪など、様々な車のトラブルに対応してくれます。
- 24時間365日対応: いつ、どこでトラブルに見舞われても、電話一本で駆けつけてくれます。
- 全国ネットワーク: 全国各地に拠点があるため、旅行先や出張先でのトラブルでも安心です。
- 非会員でも利用可能: 非会員でも有料でサービスを利用できますが、会員であれば費用を抑えられることが多いです。
- 脱輪対応: 側溝に落ちた車両の引き上げや、レッカー移動などのサービスを提供しています。状況によっては、軽微な作業であればその場で対応してくれることもあります。
自動車保険のロードサービス
多くの自動車任意保険には、ロードサービスが特約として付帯していることがあります。JAFと同様に、バッテリー上がりやパンク、レッカー移動などのサービスが含まれており、脱輪からの引き上げも対象となる場合があります。
- 保険料に含まれる: ほとんどの場合、別途費用を支払うことなく利用できます。
- 無料レッカー距離: 一定距離までのレッカー移動が無料となるサービスが多く、遠方でのトラブルでも安心です。
- レンタカー費用特約: トラブルにより車が使用不能になった場合、レンタカー費用を補償してくれる特約が付いていることもあります。
ロードサービスを呼ぶ際のポイント
ロードサービスに連絡する際は、以下の情報を正確に伝えることが重要です。
- 現在地: 可能であれば、スマートフォンのGPS機能などを利用して、正確な住所や目印を伝えます。
- 車の状況: どんな状況で脱輪したか、どのタイヤが落ちているか、車体の損傷状況(液漏れなど)を具体的に伝えます。
- 車の種類: 車種、年式、駆動方式(FF、FR、4WDなど)を伝えると、適切な機材を持って駆けつけてくれます。
- 連絡先: 連絡が取れる電話番号を伝えます。
ロードサービスは、いざという時の強い味方です。日頃からJAFや加入している自動車保険の連絡先を携帯電話に登録しておくなど、準備をしておくことをお勧めします。安全のためにも、無理な自力脱出は避け、プロの力を借りることをためらわないでください。
まとめ:冷静な判断と事前準備が命綱
側溝への脱輪は、ドライバーにとって非常に焦るトラブルの一つですが、冷静な判断と適切な対処法を知っていれば、安全かつ迅速に解決できる場合があります。今回の記事でご紹介した元整備士による脱出術は、いざという時に役立つ貴重な知識となるでしょう。
最も重要なことは、トラブル発生時の安全確保と、無理な自力脱出を試みないという判断です。車の下回りの損傷が疑われる場合や、自力での脱出が困難だと感じた場合は、迷わずJAFや自動車保険のロードサービスといったプロに助けを求めるようにしてください。彼らは専門の知識と道具を持っており、二次災害を防ぎながら安全に問題を解決してくれます。
また、日頃からの安全運転の心がけ、狭い道や路肩の状況確認、そして車両感覚を磨くことなど、脱輪を未然に防ぐための予防策も非常に大切です。万が一の事態に備え、ロードサービスの連絡先を控えておくなど、事前準備を怠らないようにしましょう。
安全で快適なカーライフを送るために、今回の情報が皆様の一助となれば幸いです。


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