天気予報やニュースで「台風○号」という呼び方とともに、「ナンカー(Nangka)」など、日本ではあまり聞き慣れない名前が登場することがあります。
この「ナンカー」とはいったい何を意味するのでしょうか。
実はナンカーは、マレーシアが提案した名前で、「パラミツ(ジャックフルーツ)」を意味する言葉です。
なぜ台風に果物の名前が付けられているのでしょうか。
その背景には、北西太平洋と南シナ海の台風に使われる「アジア名」という国際的な命名制度があります。
「ナンカー」はパラミツのこと
ナンカー(Nangka)は、マレーシアが台風の名前として提案した言葉です。
意味は、東南アジアなどで食べられている果物の**パラミツ(ジャックフルーツ)**です。
パラミツは非常に大きな果実になることで知られ、東南アジアでは食用として広く親しまれています。
台風の名前というと、日本人には「台風第○号」という数字のイメージが強いため、果物の名前が台風に付いていることを意外に感じるかもしれません。
しかし、これはナンカーだけの特殊な例ではありません。
北西太平洋と南シナ海の台風には、動植物、自然、星座など、さまざまな由来を持つ名前が付けられています。
なぜ台風に「アジア名」があるの?
現在の台風の命名方式は、**台風委員会(ESCAP/WMO Typhoon Committee)**によって運用されています。
台風委員会には、北西太平洋・南シナ海周辺の国や地域が加盟しており、加盟国・地域が台風に使用する名前をあらかじめ提案しています。
現在のリストには140個の名前が登録されています。
加盟国・地域はそれぞれ10個ずつ名前を提案しており、これを決められた順番に並べて使用します。
そのため、台風が発生するたびに新しい名前を考えているわけではありません。
140個の名前を順番に使う
台風が発生すると、用意されている名前をリストの順番に従って使用します。
140個目まで使用すると、再び1番目の名前に戻ります。
つまり、同じ名前が何度も登場することがあります。
年間に発生する台風の数は年によって変わりますが、140個の名前はおおむね数年で一巡します。
そのため、「以前も同じ名前の台風を聞いたことがある」ということも起こります。
ただし、すべての名前が必ず永久に繰り返し使われるわけではありません。
大きな被害をもたらした台風の名前は「引退」することがある
台風の名前には、いわば「引退」と呼べる仕組みがあります。
大きな災害をもたらした台風などについて、台風委員会の加盟国・地域から要請があった場合、その名前を以後の台風に使用しないよう変更されることがあります。
日本の気象庁も、この仕組みを「大きな災害をもたらした台風などは、加盟国からの要請を受けて、その名前を以後の台風に使用しないよう変更することがある」と説明しています。
ここで注意したいのは、「死者が○人以上なら自動的に引退する」といった単純な数値基準が設定されているわけではないことです。
被害の大きさなどを踏まえて加盟国・地域から変更が提案され、台風委員会で扱われます。
そのため、スポーツの「永久欠番」に似た制度として説明されることがありますが、正式には「名前の引退・変更」と考える方が正確です。
実際に引退した台風名
過去には、甚大な被害をもたらした台風の名前が変更されています。
ハギビス(Hagibis)
2019年の台風19号は、日本各地に記録的な大雨をもたらし、河川の氾濫など大きな被害を発生させました。
この台風に使われた名前「Hagibis」は、その後のリストから外され、**「Ragasa(ラガサ)」**に置き換えられました。
ファクサイ(Faxai)
2019年の台風15号は、特に千葉県を中心として非常に強い暴風による被害をもたらしました。
この台風の名前「Faxai」もリストから外され、**「Nongfa(ノンファ/ノングファ)」**に変更されました。
マンクット(Mangkhut)
2018年の台風22号は、フィリピンや香港などに大きな被害をもたらしました。
「Mangkhut」も引退し、代わりに**「Krathon(クラトン)」**が登録されました。
このように、一度大きな災害をもたらした名前が、将来別の台風にそのまま再利用されるとは限りません。
「ナンカー」もいつか変更される?
ナンカー(Nangka)については、2026年現在、台風委員会の名前リストに残っています。
したがって、現在のところ「ナンカー」という名前は通常のローテーションの中で使用されます。
将来、ナンカーという名前の台風が大きな災害をもたらした場合でも、被害が発生しただけで自動的に名前が消えるわけではありません。
加盟国・地域から変更が要請され、台風委員会で手続きが行われれば、将来的に別の名前へ変更される可能性があります。
日本が提案した台風の名前は?
日本も台風委員会に名前を提案しています。
日本の名前には星座に由来するものが多く、たとえば「コイヌ(Koinu)」「ヤギ(Yagi)」「カジキ(Kajiki)」などがあります。
ただし、現在の名前リストには過去の名前の変更によって追加されたものもあるため、「日本の10個の名前はすべて星座」という単純な説明は正確ではありません。
日本が提案する名前は、特定の個人や企業などに結び付かず、国際的に使用しやすいものが選ばれています。
日本ではなぜ「台風第○号」と呼ぶの?
日本国内の天気予報では、「台風第○号」という呼び方が一般的です。
たとえば「2026年台風第○号」のように、気象庁が発生順に番号を付けて発表します。
一方、国際的な情報交換では「Nangka」などのアジア名が使われます。
つまり、
日本国内では「台風第○号」
国際的には「Nangka」などのアジア名
という使い分けがあります。
台風は国境を越えて移動するため、国際的に共通して使える名前が用意されていることには大きな意味があります。
「ナンカー」という名前だけで台風の強さは判断できない
ここは防災上、とても重要なポイントです。
「ナンカー」「ヤギ」「コイヌ」のような名前を聞いても、それだけでは台風の強さや危険性は分かりません。
台風の危険性を判断するときは、
- 中心気圧
- 最大風速
- 最大瞬間風速
- 雨量
- 台風の進路
- 暴風域・強風域
- 河川の増水状況
- 気象庁が発表する警報や注意報
などの情報を確認する必要があります。
名前が果物や動物など親しみやすいものであっても、台風そのものが危険であることには変わりません。
「ナンカー」という名前から見える台風命名の面白さ
「ナンカー」という名前をきっかけに台風の名前を調べてみると、そこにはアジア各地の文化が反映されていることが分かります。
マレーシアからはパラミツを意味する「Nangka」。
日本からは星座などに由来する名前。
そしてほかの国や地域からも、それぞれの文化や自然に関係した名前が提案されています。
つまり台風の名前は、単なるニックネームではありません。
北西太平洋という広い地域で発生する台風を、国境を越えて識別するために作られた国際的な命名システムの一部なのです。
そして、その名前の中にはアジア各地の文化や言葉が詰め込まれています。
ニュースで「台風○号、アジア名ナンカー」と聞いたときには、単なる聞き慣れない名前としてではなく、
「ナンカーはマレーシアの言葉で、パラミツを意味する名前なんだ」
と思い出してみると、台風の名前にも少し興味が湧いてくるかもしれません。
まとめ
- ナンカー(Nangka)はマレーシアが提案した名前
- 意味はパラミツ(ジャックフルーツ)
- 北西太平洋・南シナ海の台風には、台風委員会が用意した140個の名前が使われる
- 名前は決められた順番で使用され、リストの最後まで行くと再び最初に戻る
- 大きな災害をもたらした台風の名前は、加盟国・地域からの要請によって変更されることがある
- 「Hagibis」は「Ragasa」、「Faxai」は「Nongfa」、「Mangkhut」は「Krathon」に変更された
- 日本では国内向けに「台風第○号」という番号が主に使われる
- 台風の名前そのものから強さを判断することはできず、防災情報や気象データを確認することが重要
台風の名前には、単なる呼び名以上に、アジア・太平洋地域で共通して災害情報を伝えるための国際的な仕組みが込められています。


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